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三家店(永定河沿い露頭)

1:先カンブリア紀と下部カンブリア紀

2:中部カンブリア紀

3:上部カンブリア紀

4:オルドヴィス紀

*実際の巡検コースは1→4→2→3→1の順であったが、ここでは時代の古い順に列記する。


1:先カンブリア紀と下部カンブリア紀

先カンブリアの赤い露頭 緑色の露頭 千枚岩のような露頭
赤い露頭 緑色の露頭 千枚岩のような露頭

 今回の巡検のメインテーマは、先カンブリア紀(中国名は震旦紀<シンタンキ>。層の名は昌平層。)と下部カンブリア紀の境界を見ることである。私は露頭の大きさは想像しなかったが、はっきりくっきりした境目が見られるのだろうと期待していた。実際、大森先生もはっきりした境目を見る予定でいらしたようだった。
 宿舎から、石炭系の石灰を使ったセメント工場・ジュラ紀の岩山を抜けて1時間以上走る。「下葦甸」という町の横に2車線くらいの幅の道路が川沿いに続いている。永定河は、地図で見ると蛇行が激しく、それほど太い川でもない。東側に川が流れているが、道路の西側には、大きな崖が続いている。この崖こそ、目的の先カンブリア紀と下部カンブリア紀の境目が見える崖である。
 道路に隣接してそびえる崖は、見上げても高さがどのくらいあるのかわからない。
 先カンブリアの露頭は、黒に近い灰色と、くすんだ赤色の帯が縦じまになって並んでいる。黒に近い灰色の方は、粒粒が見えるところもある。一方、酸化鉄の混じった赤い帯は、粒粒はあまり見えず、泥岩のように細かい粒子が寄せ集まっている。説明によると、泥質の片麻岩という話だが、ところによっては千枚岩のように薄い岩の層が何枚も重なっている風に見える。高温低圧と低音高圧の部分が混じっているということだろうか。(サンプルは、灰色の方を砂質石灰岩、赤色の方を赤色頁岩とした。)
 一方、下葦甸から離れていき、赤い帯がなくなり、黄ばんだような色と凝灰質の青緑がかった灰色でできた縦じまになる。そこからが、下部カンブリアの露頭と考えられるらしい。

先カンブリア(震旦紀)
砂質石灰岩

砂質石灰岩(sandy lime stone)
 魚卵状構造が見えるような気がする。しかし、魚卵状構造ではない・・・。今回の巡検で1番頑強そうな石面をしている。常に何かを思案している、そんな面持ちがちょっとカッコイイ。

赤色頁岩 赤色頁岩(red shale)
 有燐堂のブックカバーのような波型模様が表面についている。肌触りの良いビロードのような風合いが、温いのではないかと感じられるが、石ゆえに冷たい。しかし、ツルツルでもザラザラでもない、ヴェールに触れる感触は、とても気持ち良い。このような石が造っている崖は、たとえ鋭角に削られていても、優しい。


下部カンブリア
魚卵状石灰岩 魚卵状石灰岩(woolitic lime stone)
 「面白い」と思わず言ってしまう構造だ。直径1ミリ弱の丸いツブツブが、ギッシリ詰まっている。タラコのような感じで、丸いツブがギュウギュウ押し合っている。風化面は卵の皮がつぶれてくっついているみたいである。卵を一粒取り出してみたい・・という衝動に駆られる。
 

*下2図は、クリックすると拡大画像が見られます。

魚卵状(woolitic)
 同心縞状構造を持つ小球状態の集合を形容する語。球状体の直径は0.2〜2ミリくらい。これ以上大きくなると、豆状。石灰岩・鉄鉱・珪質岩に多く、微細な異物を核とした化学的沈殿作用でできる。(『地学事典』より)
魚卵状石灰岩接写1 クリックで拡大画像へ
魚卵状石灰岩接写2 クリックで拡大画像へ


先カンブリアと下部カンブリアの不整合??
不整合?その1
不整合?その1の拡大 不整合?その1の断層の入り方解説図
 左図の右側部分をよく見ると上図のような断層が入っているのがわかる。(上右図は上左図の断層の入り方を図解したもの)今回は、この右手側が先カンブリアで左手側が下部カンブリアではないかという予想を立てた。

 先カンブリアと下部カンブリアの境目が、不整合で見られると聞いていたが、肝心のその境目がはっきりしない。その理由はいくつかあるようだが、主なもの2つを挙げる。

理由@激しい地殻変動によって層序が乱れていること。実際、たくさんの断層が入っていたり、千枚岩のような場所もあるので、露頭を見ながら納得できる。

理由A干潟での堆積のために波などの影響を受けて堆積物が定期的には溜まりにくかったこと。これは、私は見てもわからない。だが、理屈としては真っ当で、理解できる。この露頭のあたりは、華北古陸という陸地の前に広がっていた浅い海(あるいは干潟)であった。そして、この干潟は断層などからわかる地殻変動によって動き、海の波や台風などの影響によって、溜まった泥や堆積物を奪われ、規則正しい堆積が行なわれず、層序が乱れたというのである。

 今回の境目予想場所は、断層がいくつも入っていて、赤い帯がなくなる場所としたが、上記等の理由から、不整合を断定することは難しいという説明を戴いた。
 また、この露頭には点々とボーリングの後が見られる。ボーリングをした人たちは古地磁気を調べるために行なったようだとのこと。穴の開き具合いから見て、私たちが境目と推定した場所よりも、町側のほうを境目とにらんでいるのではないか・・・と予想。
 道路に隣接するこの露頭は、見上げても高さがどのくらいかわからない。また、どこまで続いているのか、クネクネ道の先を見ても、ずっと続いているようでわからない。そんな、とても大きい露頭は、肉眼で観察するだけでは、その成り立ちを教えてくれないようである。ボーリングをして、崖を化学的に分析した人たちは、もう境目の在処を見つけたのだろうか。
 この崖に比べて、この地球に比べて、あまりにも小さく、少数の研究者(つうやく)が、見て触って、あちこち穴をあけ、少しずつその生い立ちを探っている。地球の声を、聴いている。でも、その声は、大きな崖の、大きな地球のものでありながら、とても小さい。かすかな声は研究者の方々の拡声器を通して、私に届く。が、どんなメッセージなのか、ようやく届いたその声をただ聞くだけではわからない。聴き取り方のポイントを、想像のヒントを一つ一つ教えてもらって、おぼろげに理解する・・・それが私の限界。

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2:中部カンブリア紀

中部カンブリアの露頭

 道路から急な階段を昇ると、左手に大きな礫の山が見える。石灰岩を資源として利用するために、下の方は崩されているようであった。この礫の山を見ていると、アリ地獄の中に入れられたような感じがする。埋没していくような、不安にかられる。その気分から逃れるために、初めは足元に転がる石ころを見ながら、大森先生の「魚卵」講座を伺っていた。マグネシウムなどのまわりに炭酸カルシウムが巻きついていってできるのだそうである。真珠ができるのと同じようなかんじなのかな、と思った。
 そして、ふと見渡すと、露頭から少し離れたところに山のトンネルを結ぶ陸橋が見え、その上をちょうど列車が通っていた。電車ではない。いつまでたっても切れない、長い長い列車だった。日本で石炭を運ぶ列車と同じ形の車両であった。
 道路に止めてある車に戻ろうとした所、階段の横にあった石炭がジュラ紀のものであると教えていただいた。また、階段のあちこちに置いてある(落ちている?)レンコンのように穴の開いた丸い素焼きは、昔日本でも薪(燃料)の代わりに使ったんだよ、と原田さんに教えていただいた。石炭も、このレンコン型薪も、今日本ではほとんど使われなくなった燃料である。近くを通った長い列車も、ディーゼルか機関車だと思う。そういえば、先カンブリアと上部カンブリアの境を見に行った露頭の所でも、三輪駆動が走っていた。「古き良き」がここにあるかは定かではないが、一時代昔の日本にタイムスリップしたようで、少し寂しくなった。こんな場所がある一方で、少し離れた北京の市街では、急速な近代化がガラガラと音をたてている。

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3:上部カンブリア紀

上部カンブリアの露頭  波などの水の影響を受けることによって、水底をつくっている泥が波打ち、模様が残ることがある。1・2の矢印で示した場所が、その痕跡「リップルマーク」である。しかし、微妙に1と2の色が異なる。2は、まるでセメントのようだ。1はホンモノかもしれないが、2もホンモノだろうか・・・。
上部カンブリアの露頭の場所から見える山  上部カンブリア紀の露頭がある場所から見える山。実際は、このあたりは山だらけなのだが、この山はちょうど全体を眺められるところにそびえている。いくつも重なり合った岩板がしなっているように見えるのが、面白い。

 オルドヴィス紀の露頭から数分で、上部カンブリアの露頭に到着した。能面のような、表情を感じられない露頭である。ブスッとした露頭である。あんまり人が好きではないのだろうか。嫌いなのだろうか。「あ、来たの」と、面倒そうにそこにいる。
 露頭の下には丈の長い草がたくさん生えていて、近づけない。少し上の方を見上げると、海や川の水面(みなも)のように波打つリップルマーク(連痕・れんこん)が見える。波状や竹葉状のリップルマークが見られることが上部カンブリアの特徴である、と大森先生は説明してくださいました。しかし、最初に目にしたリップルマークのうち、灰色で崖に張り付いているような部分は、どう見てもセメントにしか見えなかった。
 また、この露頭沿いに歩いていくと、レンガなどが積み重ねられている所があり、その中に「竹葉状」のリップルマークが見られる岩も入っていた。この岩が積み重なっていた所のすぐ近くには、「中国石化集団」というガソリンスタンドがあった。結構大手らしく、北京の市街地からここに来るまでの間に、同じガソリンスタンドをいくつか見かけた。

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4:オルドヴィス紀

オルドヴィス紀の露頭
露頭で化石探し。

 急な斜面に足をかけながら、化石を探した。露頭には、草が張り付いたようなデコボコ模様がたくさんついていて、化石のようにも見える。が、オルドビス紀の地球に「草はないだろう・・・」ということで、即刻却下。そうこうしているうちに、誰かがらせん状の化石(巻貝)を発見。化石を見つけるのが、非常に苦手な私は、それを聞いて妙に焦った。「ネェ、どこにいるの?」と崖だけでなく、足元に剥がれ落ちている石に聞いてみる。やはり、草のような模様が見えるばかりで、わからない。薄っぺらい石を手にしていたところ、大森先生がその石を見てくださった。すると背中から、「藻類の化石が入っている。」との声が。振り返って、鑑定後の石を見る。やはり、先ほどのままの石板だ。でも、この中に藻類の跡が残っている。「水で洗うとよく見えるようになる。」という小出さんのアドバイスにうなずきながら、「もう少し良く見せてよ。」と指の腹で石を叩いた。それでも、その石は変わらなかった。
 最終的に、ここで3種類の化石が見つけられた。らせん状の化石と棒のような藻類の化石、そしてC型をした化石である。中でも、C型の化石は1つ見つかると次々に見つけることができて、面白かった。私も2つ見つけられたが、残念ながらうまく写真が撮れず、今回このページに載せたのは呉先生が見つけられたという化石。

らせん状の化石 らせん状の化石の入り方解説図 らせん状の化石接写
左に、らせんを描き、黒光りする貝化石が入っている。中央図は解説図、右図は接写。

 らせん状の化石は、今まで博物館などで見たことのあるアンモナイトやらせん状の貝の化石と同じように、吸い込まれそうな黒い光を放っている。写真だとミミズが這ったようにしか見えないが、実物はもっと美しい。

棒状(藻類)の化石 棒状(藻類)の化石接写
左下、斜めに黒い棒状の化石(藻類)が入っている。右図はその接写。

 らせん状の貝化石がミミズが這ったように見えるのに対し、この藻類の化石は、ミミズを伸ばしたようである。真っ直ぐな黒い棒の中に、横に筋が入っているように見える。

C型の化石 C型化石の入り方解説図
C型をした化石。右図はその解説図。

 C型の化石の大きさはまちまちで、5mm程度のものから1cmを越えるものまである。形があまり崩れていなものは、Cの入り口が、内向きに曲がっている。変形してしまっているものもたくさんあった。


応用問題 C型化石を探そう・クリックすると正解画面へ!
 右の写真の中に3つ、C型をした化石が含まれています。ただし、2つは変形しています。白黒画像のため見えにくいかもしれませんが、探してみましょう。

 写真をクリックすると、正解の画面が出ます。

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