冥王代のチャートとプレートテクトニクス

 冥王代(Hadean)は、地球が誕生した45億年前〜38億年前のことで、先カンブリア時代(Precambrian time,45億年前〜5億4400万年前)に含まれる。

 地球誕生当時の環境は、“No rocks on the Earth are this old - except for meteorites.During Hadean time, the Solar System was forming, probably within a large cloud ofgas and dust around the sun, called an accretion disc. The relative abundance ofheavier elements in the Solar System suggests that this gas and dust was derived froma supernova, or supernovas - the explosion of an old, massive star. Heavier elementsare generated within stars by nuclear fusion of hydrogen, and are otherwise uncommon.(1) ”とあるように、我々が今足をつけている地殻は存在せず、マグマの海であった。この環境の中で生息できる生き物がいるとは、あまり思えない。

 実際、“It was early in the Archaean that life first appeared on Earth. Our oldestfossils date to roughly 3.5 billion years ago, and consist of bacteria microfossils.In fact, all life during the more than one billion years of the Archaean was bacterial.(2)”で、現時点で見つかっている最古の生物化石は、35億年前(太古代初期)のバクテリア化(Warrawoona;シアノバクテリアの一種,ピルバラ地区ノースポール(豪)産)である。

 ↓シアノバクテリア(左:,右:2)

 シアノバクテリアは、「原核生物に属する原始的な藻で、地球に初めて酸素をもたらしたのもラン藻だと考えられています。ラン藻は、太陽からの光を利用して、水から水素と電子を引きはがし、酸素として放出します。今でも、田んぼの底や塩分の濃い海などにすんでいますが、35億年前の地層からもラン藻の化石が見つかっており、当時からほとんど形を変えずに生きつづけてきたと考えられています。(8)」という生き物。

 また、現在も生き続けるシアノバクテリア“ストロマトライト”は、1960年代に発見されている。「1960年代後半,オーストラリアの西海岸,シャーク湾のハメリンプールで,西オーストラリア州地質調査所のプレイフォードが現生のストロマトライトを発見し,構造と生成のメカニズムを報じると情勢は一変した。縞状構造は潮の干満と関連したラン藻の生成と死滅の繰り返しによる堆積構造だったのである。ハメリンプールは高塩分の浅い海であるため,他の生物が住めず,ラン藻類だけの世界が実現した。ストロマトライトは今から7億〜8億年前に急激に減少するが,それは藻類の作る層を食物とする底生動物が海中に登場したからだろう。(9)」

 これらのことから、地球上で最初の生命は、浅い海に生息していたと考えられた。

↓原生のストロマトライト(左:13,右:14)

 しかし、ノースポールのバクテリア化石の母岩は、チャートである。

 チャート(chert)は、陸から離れた深海底でできた、緻密な微粒のケイ質(SiO2)堆積岩である。非常に硬く、火打石に用いられるほか、庭石などにも使用されている。色は、少量含まれる塵状鉱物によって、赤褐色、淡緑色、灰色などがある。割れ口は鋭く角張っており、貝殻状である。(参考:5,6,7)

 つまり、チャートが母岩であることを考えると、最初の生命は深海に生息していた可能性がある・・・もちろん、前述の説とは正反対の説である。過去の生命の生息環境は、現在のシアノバクテリアが生息する環境から推察するか、母岩のでき方から推察するかで、全く異なる結論が出ているのである。

 更に,最初の生命が深海に生息していたと考える説の中には,その場所には熱水が噴出していたというものもある。(参考:12)それを可能にするには,熱水の中でも生息できるバクテリアでなくてはならないが,そのようなバクテリアは、いるのだろうか。

「100度を越える温度で増殖する古細菌
20年以上前から100度を越える生物がいたとか、間違いだったとか話題になっていたが、いる事は間違いないらしい。ただし沸騰すると死んでしまうらしく、深海底などの 100度でも沸騰しない環境に生息している。これは古細菌といわれる生物の仲間で、超高好熱菌ともいわれている。海底火山の噴火口などに生息し、火山から発生する化学物質をエネルギー源としている。100度ぐらいでもっともよく増殖し、80度くらいの低温になると死んでしまう奇妙な生物である。近縁のものが地上の火山湖や温泉中などにもすんでいる。こちらの方はさすがに100度はだめだが90度ぐらいは平気であるし強酸中に住んでいるものも多い。()」

 ――100度でも沸騰しない深海底に生息する超高好熱菌という生物がいるとのことである。すると,初期生命が熱い深海から発生したという説は矛盾がないようだ。「最古の海の地層:イスア及びアキリア表成岩、>38.8〜38.1億年前。礫岩、石灰岩、縞状鉄鉱。枕状溶岩。…確実にある程度の規模の海洋が存在。地質的にも陸と海の違いあり。(14)」ということであれば、38.8〜38.1億年前にはすでに海があったことになる。38.8億年以降には生物が存在していたとなれば、35億年前以前の岩石から、生命の痕跡が発見されてもおかしくはない。 もし発見されれば、それは、原核生物よりも前の段階の生命がどのようなもので、どのような場所で生まれたのかがわかるかもしれない。また、その岩石が、チャートだったら、35億年前のバクテリアよりも進化していない生物かもしれないし、そうだとすれば生命の起源がより明らかになる可能性もある。

イスアの38億年前の海洋地殻と堆積物

イスア地域東部の枕状溶岩と縞状鉄鉱の層序の繰り返しのようす
 画面中央に玄武岩質枕状溶岩があり、両側は縞状鉄鉱層。画面左が堆積時の上位。右上の境界は断層、左下は整合的。
 よく見ると枕状構造や、縞状鉄鉱の細かいチャートと鉄鉱物の互層がわかる。

(15より抜粋)

 「地球上で見つかっている最も古い岩石は89年にカナダで測定された39億年前のもの(3)」であり、その岩石中から生命の痕跡が見つかったという意見(参考:12)と、“No onehas found any rocks on earth from this era. Only meteorites from space and moon rocks are this old. If any life formed on earth during this era, it was probably destroyed. (中略) Once solid rock formed on the Earth, its geological history began. This most likely happened prior to 3.8 billion years, but hard evidence for this is lacking. Erosion and plate tectonics has probably destroyed all of the solid rocks that were older than 3.8 billion years. The beginning of the rock record that is currently present on the Earth is the inception of a time known as the Archaean. (4)”のように、岩石の存在自体がないという意見とがあり、はっきりと39億年前の岩石から化石が発見されたとは言えない。だが、風化やプレートテクトニクスの影響で38億年前よりも古い岩石は残っていないだろうというのならば、なぜ35億年前の岩石は、現在まで残ったのだろうか。明確な回答はどこにも見当たらない。とすれば、過去にあったものが絶対にないとは言い切れないだろう。

 また、「最古の岩石(アカスタ片麻岩)は花崗岩…39.6億年前すでに海洋あり??、(プレートの)沈み込みによる花崗岩マグマ形成の進行?。アカスタ片麻岩中に含まれる縞状鉄鉱、石灰岩の年代がわかれば、海の存在した時代をもう少し遡ることができるかもしれない。(14)」という資料を考えると、38.8億年よりももっと前の39.6億年前から生命があった可能性も出てくる。では、地球で最も古い岩石が残っているとしたら、それはいつ頃のものなのだろうか。

 現在見つかっている地球でできた一番古い物質は、「 最古の鉱物:42億年以上前の年代を示す、ジルコン粒子(砂粒)…オーストラリアの33億年前の礫岩中に発見。成分の分析から、花崗岩質の岩石を起源とするものと想定される。海洋については何とも言えない。 (14)」である。しかし、岩石となると、現在見つかっている最古のものは、39.6億年前。この差はなぜ生じるのだろうか。

 「原始海洋が形成されたのは約40億年前だが、それによって大気中の二酸化炭素は吸収され、地球表面温度は急激に低下し、プレートテクトニクスが始まった。(16)」40億年前以前の岩石が発見されないのは、40億年前にプレートテクトニクスが始まったからである。

 もし、プレートテクトニクスに飲み込まれずに38億年以上前の岩石が残っているとしたら、より明確な地球の始まりがわかることになる。また、35億年前よりも古い岩石から、生命の足跡が発見されれば、それは、原核生物よりも前の段階の生命がどのようなもので、どのような場所で生まれたのかがわかるかもしれない。さらに、その岩石が、チャートだったら、35億年前のバクテリアよりも進化していない生物かもしれないし、そうだとすれば生命の起源がより明らかになる可能性もある。


参考文献

1http://www.ucmp.berkeley.edu/precambrian/hadean.html

2http://www.ucmp.berkeley.edu/bacteria/bacteriafr.html

3http://www.gns.ne.jp/eng/cael/database/encard/card3/cd27_1.htm

4http://www.cotf.edu/ete/modules/msese/earthsysflr/cambrian.html

5http://www.ncsm.city.nagoya.jp/exhibits/L/L2/3208.html

6http://www.mbird.ne.jp/QQQ/yogo/saiseki/n23y0170.htm

7http://www.uchida.env.waseda.ac.jp/members/text/taisekigan.htm.

8http://www.gifu-nct.ac.jp/sizen/nakasima/bio.htm

9http://www.remus.dti.ne.jp/~motonao/study/

10http://village.infoweb.ne.jp/~hispider/biology/ancient.htm

11http://village.infoweb.ne.jp/~hispider/biology/ancient.htm

12http://www.moriyama.com/netscience/Maruyama_Shigenori/Maruyama-1.html

13http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~inouye/ino/cy/stromatolite1.GIF

14http://www3.justnet.ne.jp/~hagiya/earth6.htm

15http://www3.justnet.ne.jp/~hagiya/isua1.htm

16http://moriyama.com/sciencebook.98.1.htm#sci.98.1.11

17http://www.cubas.co.jp/html/e_bg-alg.htm

http://www.sci.shizuoka.ac.jp

http://www.ncsm.city.nagoya.jp

http://www3.justnet.ne.jp/~hagiya

http://www.moriyama.com/netscience/Maruyama_Shigenori

http://helix.nature.com/nsu/000629/000629-5

http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/msj3/KENREN.html