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講 義: 2_07 大地:現在と過去(その2)
掲示板: 地下の熱と地表の温度

▼4 大地の仕組み:プレートテクトニクス
1 プレートとは
 海洋地殻のできかたから、地殻というものが、一枚の板のようなふるまいをすることがわかってきました。地球の表面をおおう大きな岩石の板を、プレートとよんでいます。プレートとは板を意味します。
 前の講義では、海の海洋地殻をおもにとりあげましたが、大陸地殻も大陸のプレートをいうべきものであることがわかってきました。
 主だったプレートをみていくと、地球表面は10枚程度のプレートでおおわれています。それぞれがプレートとして動いていることがわかります。

 詳しく観測すると、マントルの上を海洋や大陸の地殻だけがプレートとして動くのではなく、マントルの上部のほうもプレートとして動いていることがわかります。マントルもふくめてプレート全体のことを、リソスフェアとよんでいます。
 リソスフェアは、海洋域では30〜90kmの厚さがあり、大陸域では100kmほどの厚さがあります。
 プレートの境界は、地殻のマントルのさかい目ではなく、マントルの中にあることになります。そのような境界は、マントルの岩石の性質の変わり目となっています。
 プレート境界より下のマントルの岩石は、温度と圧力のために、少し溶けて、やわらかく、流れやすい性質をもつようになっています。そのような性質のマントルの部分を、アセノスフェアとよんでいます。
 マントルの地震波の観測で、アセノスフェアは、少し溶けたて地震波の速度が遅くなった層(低速度層)としてみわけることができます。

2 プレートテクトニクスとは
 プレートの動きが、地球の大地の活動の重要な役割となっています。前回の講義では、海洋地殻の一生を見てきましたが、ここではプレートの一生という視点で見ていきましょう。
 まず、プレートの形成です。
 中央海嶺にマントルが上ってくることによって、新しい海洋プレートがつくられていきます。中央海嶺でできた海洋プレートの上部にあたる海洋地殻は、
・どの海嶺でも似た岩石、
・どの時代でも似た岩石、
が形成されることは、前回見てきたとおりです。

 新しくできた海洋プレートは、海底を移動していきます。移動に伴って、プレートは、
・温度が冷める:できたてのプレートは熱い
・体積が小さくなる:岩石は冷めると密度が大きくなる
・上に堆積物がたまる:プランクトンなどの死骸がつみかさなる
・岩石が変質する:海嶺の熱のために岩石に海嶺特有の変質作用がおきる
などという変化がおこります。
 冷めて重くなったプレートは、海溝でマントルに沈みこみます。
 このようなプレートの形成、移動、沈みこみによって、地球のさまざまな地質現象を説明する考え方を、プレートテクトニクスといいます。
 ここまで、海洋プレートを中心に見ていきましたが、大陸プレートは、海洋プレートとは少し違っています。それは、大陸プレートには大陸地殻が乗っかっているからです。
 大陸地殻が軽いため、大陸プレートはいちどできるとマントルへは沈むことができず、ずっと地表にのこり続けます。さらに、大陸地殻は、あとでのべる大陸地殻周辺で起こるマグマの活動によって、増えていきます。つまり、大陸地殻は増えていくいっぽうなのです。
 このようにプレートに種類の違いがあることが、地球表面の活動に多様性をもたらしているのです。

3 プレートどうしの関係
 プレートどうしでとりうる関係として、離れる境界、収束(しゅうそく)する境界、すれちがう境界の3つがあります。それでは3つの関係をみてきましょう。
 離れる境界とは、2つのプレートが離れていくところ、あるいは遠ざかるところ(発散(はっさん)ともよばれることもあります)ともいえます。つまり、プレートが生まれているところです。海洋プレートの形成の場である海嶺が、発散の場となります。
 離れる境界は、海嶺だけですが、海嶺は長く延びています。そして、地球の3分の2をしめる海をつくっているみなもとでもあるのです。
 海嶺は、太平洋の東部に東太平洋海嶺(海膨(かいぼう)とよばれることもあります)があり、大西洋に大西洋中央海嶺があり、インド洋にはインド洋中央海嶺があり、南極大陸を取り巻くように、南東インド洋海嶺、南西インド洋海嶺、チリ海嶺、太平洋−南極海嶺があります。
 収束する境界(収斂(しゅうれん)とよばれることもあります)とは、プレートが、衝突したり、なくなったりしていくところです。

 衝突するプレートが、大陸プレートと海洋プレートの組み合わせによって
・海洋プレートどうし
・海洋プレートと大陸プレート
・大陸プレートどうし
の3つの場合ができます。

 海洋プレートどうしの衝突のれいは、小笠原列島と太平洋の境界でみられます。古い海洋プレートのほうが、つねに沈みこみます。それは、古い海洋プレートのほうが、より冷めて、重くなっているからです。海洋プレートどうしの沈みこむ境界では、海溝ができます。
 海洋プレートと大陸プレートのれいは、南アメリカ大陸と太平洋の境界です。重い海洋プレートが、大陸プレートの下に、つねに沈みこみます。そしてその境界には、やはり海溝ができます。
 大陸プレートどうしのれいは、ヒマラヤ山脈です。ヒマラヤ山脈では、インド大陸とユーラシア大陸とも、軽い大陸プレートどうしですから、沈みこめず、衝突してもりあがります。大陸どうしの衝突では、長く大きな山脈ができています。大陸地殻のなかに古い山脈をさがしていけば、そこにはむかしの大陸地殻どうしの衝突の歴史が残されていることになります。
 2つのプレートがすれちがう境界には、横にずれる断層ができます。このようなプレート境界にだけみられる横ずれ断層をトランスフォーム断層といいます。

 トランスフォーム断層は、海嶺ののびる方向に対して直交してできています。つまり、トランスフォーム断層では、海嶺がずれています。海嶺の入った地形図をみると、トランスフォーム断層で海嶺がずたずたに切りきざまれたようになっています。海嶺周辺には、トランスフォーム断層がたくさんできていることがわかります。このようなトランスフォーム断層は、プレートテクトニクスの重要な証拠となっています。
 ふつうの横ずれ断層だと、断層のずれの方向は同じになります。たとえば、地面を垂直に割って、ずれている断層があるとします。その断層のある側にたって断層をみたとします。断層のむこう側をみると、右か左のどちらかにずれているはずです。このずれの方向は、どこでもその断層のどこでも変わることなく、同じ方向になっています。
 ところが、トランスフォーム断層では、不思議なことがおこります。海嶺と海嶺のあいだの断層では、普通のずれ方なのですが、海嶺からはなれると、断層はあるのですが、移動方向、つまりずれの方向が同じで、ずれの程度の違いが断層となっています。トランスフォーム断層は海嶺からはなれると消えてなくなります。
 トランスフォーム断層は、プレートがかたい板としてふるまうときにできるひずみを解消するためにできています。つまりトランスフォーム断層は、地球表面上のプレートが変形しないで運動していることを示している証拠となっているわけです。
 もうひとつ、トランスフォーム断層には重要な特徴があります。それは、海嶺や海溝のはしが、トランスフォーム断層になっているということです。トランスフォームとは、変容という意味があります。海嶺や海溝が、トランスフォーム断層に連続しているということです。
 海溝と海溝をつなぐトランスフォーム断層としてはニュージーランドのアルパイン断層、海嶺と海嶺をつなぐトランスフォーム断層としてはアメリカ西岸のサンアンドレアス断層などが有名です。
 海嶺や海溝、トランスフォーム断層が、地球表面に、あみ目状のネットワークをつくっています。これらがプレートの境界となっているのです。このようなネットワークが、プレートテクトニクスの重要な証拠といえます。
 プレート境界は、地形にはっきりと見える形であらわれ、その地形じたいにプレートの役割がはっきりのきざまれています。海嶺はプレート形成の場、海溝はプレート消滅の場、山脈はプレートの衝突の場、トランスフォーム断層は、プレートの境界とひずみの解消の場として、あるのです。

4 トラスフォーム断層は重要な概念
 トラスフォーム断層の多くは、海の中にあります。ですから、海の観測によって、その実態がわかってきて、1960年代になってからのことです。その意味するところは、1965年にカナダのウイルソン(J.T. Wilson)が最初に見ぬき、トラスフォーム断層と名前をつけました。
 トランスフォーム断層は、一見すると単純な断層のようにみえますが、よく観測すると、ふつうの断層にはみられない重要な特徴があることがみえてきました。
 トランスフォーム断層は、プレートが割れるという現象なのですが、周辺のプレートの動きや性質と関連して、トランスフォーム断層の運動は複雑になります。そして、トラスフォーム断層の重要性も理解されてきました。トランスフォーム断層の複雑さは、プレートテクトニクスの重要な概念を含んでいたのです。

教訓 単純にみえるが複雑なこともある

▼5 プレート境界でのできごと
 地球には、火山がたくさんあるところや地震がたくさんおこるところあります。そのような火山や地震は、プレートの境界あるいは境界の付近が多くなっています。火山活動は、それぞれの境界で、特徴のあるものとなっています。
 ここでは、火山とプレートの関係をみていきましょう。

1 島弧
 沈みこむ境界の海嶺では、地震がおこります。そして沈みこまれるプレートには、海溝に平行に、たくさん火山ができます。このような火山が、海洋プレートどうしの衝突の境界できできると、海の中の火山列島となります。このような火山列島は、弓形になるため、島弧(とうこ)とよんでいます。弧とは、円周の一部という意味です。小笠原諸島は、海の中にできた島弧の代表的はれいです。
 火山列島が長い時間にわかってつづくと、そこには大陸地殻のように成長した島弧ができます。このように成長した島弧は、日本列島が代表的なものです。
 また、大陸プレートの周辺にできる海溝では、大陸地殻の上に火山ができます。このようなものを陸弧とよぶことがあります。
 島弧や陸弧では、火山のできるところが、海溝からある距離のところにでき、それより前には火山ができません。海溝から最初に火山があわられるところをむすんで、火山前線(ぜんせん)というものが考えられています。火山前線は、海溝から、100〜300km離れたところにできます。火山前線から遠ざかると火山の数が減ります。そしてまったく火山がないとことへとなります。
 このような島弧の火山の特徴は、沈みこんだ海洋プレートに関連したものだと考えれています。火山前線の下の100〜200kの深さに海洋プレートがあります。そこでは沈みこんだプレートから水分が、圧力によってしぼりだされます。そのような水分が、島弧の下に上がってきて、そこの暖かいマントルや大陸地殻を溶かしてマグマができると考えられています。
 島弧の火山は、安山岩やデイサイトとよばれるマグマが多いのが特徴です。また、安山岩やデイサイトのマグマがゆっくり冷えてできた花崗岩も島弧の地殻のなかにはできます。このような島弧のマグマの活動は、あたらしい大陸地殻をつくっているものといえます。
 海溝というプレート境界は、海洋プレートが沈みこんで消滅する場でありながら、新しい大陸地殻が形成される場でもあるわけです。

2 海嶺
 海嶺は、なんどものべましたが、海洋地殻ができるところです。
 海嶺の火山活動は、島弧のマグマのでき方や性質も違います。
 海嶺では、マントルの一部が融けてできた玄武岩のマグマが活動しています。海嶺では、熱いマントルが上がってきて、浅くなり圧力が小さくなるために、溶けだします。島弧と違って海嶺では、水が加わることなく、圧力の低下によってマグマができると玄武岩のマグマとなります。
 海嶺では、同じ性質のマントルがいつも上がってくるところなので、そのマグマの性質は、38億年前から現在まで、いつも同じで、そして多分未来にも同じものができると想像できます。

3 プレートと関係のない活動
 プレートの仕組みと関係なく、つまり、プレートの境界と関係なく、火山ができることがあります。それは、ここではくわしく紹介しませんが、もっと地球の深いところから上がってくるマントルのわき出し口になっているところです。ホットスポットとよばれる火山です。
 海洋プレートの中にある火山としてはハワイ諸島、大陸プレート内にある火山としてはアメリカ合衆国のイエローストーンなどが有名です。このような火山はプレート境界とはあまり関係なく活動します。プレート境界の上にも、こような火山ができることがあります。海嶺の上にできた火山が、アイスランドです。
 このような火山は、暖かいマントルが上がってきてできるので、圧力の低下によるマグマの形成です。ですから、玄武岩のマグマとなります。ただし、海嶺とマグマと違って、上がってくるマントルが定常的(ていじょうてき)でないので、溶ける割合が少なかったりするので、玄武岩のマグマでも、少し性質の違うものができます。

4 プレートテクトニックスによる未来予測
 プレートテクトニクスの考え方によって、プレートの運動を過去にもどせば、過去のプレートの配置が読み取れます。
 現在の海嶺や海溝ができるより前の情報は、大陸地殻にのこされた、島弧の岩石や山脈から読み取れます。
 島弧の岩石があるということは、海溝があったことがわかります。海溝の先には、海嶺があったことが読み取れます。あるいは、オフィオライトから過去の海洋地殻があったことがわかります。山脈があるということは、そこには大陸どうしの衝突があります。そしてさらに前には、大きな海があったことになります。
 大陸地殻の岩石をたんねんに観察して、復元していきますと、過去の大陸や海洋の配置が読み取れます。
 逆に、現在のプレートの運動をずっと進めていけば、将来のプレートの配置が予想できます。つまり、未来の大陸や海洋の配置のようすが、予測できるわけです。それも、科学的な根拠に基づいた未来が予想できるのです。

教訓 規則正しいできごとからは、未来図がえがける

 これは、学問がもたらしら非常に重要な成果です。今まで、地球の科学は過去を探ることが、おもな研究の目標でした。しかし、未来を探ることが、学問としてできるようになったのです。そして、その未来へのカギは、現在と過去にあったのです。

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掲示板: 地下の熱と地表の温度
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・地下の熱と地表の温度・
 Nanさんから、「地下が熱いのに、地表はなぜ熱くならないのか」という質問を受けました。
 それ対して私は、以下のように答えました。
「地表が熱くならないのは、岩石の熱の伝わり方(熱伝導度)の悪さによるものです。これが答えです。魔法瓶のなかに熱湯が入っていても、外は熱くないのと同じです。岩石とは、断熱性のよい素材だということです。以下で少し詳しく説明します。
 まず、地球内部が、なぜ熱いのかということについてです。
 地球の内部が熱いのは、内部に熱があるからです。一般にあたたかいものは、もともとあった熱いものがまだ冷めていないか、熱を発生する仕組みがあるためかのどちらかです。地球は、両方の熱源を持っています。
 地球内部の熱源で、もともとあったものとしては、昔、地球ができたときのエネルギーで地球深部にいまだに保存されているものがあります。これは重力エネルギーとか、位置エネルギー、衝突のエネルギーなどと呼ばれています。また、外核が液体から固体になるときの放出される熱も、核もできた頃のエネルギーが保存されているとみなすことができます。とすれば、核がまだ、すべて固まっていませんので、地球内部に昔のエネルギー、つまりは熱のもとが一杯のこっていることになります。
 地球内部で熱を発生する仕組みとして、放射性元素の崩壊のエネルギーなどが考えられています。地球形成の頃には、寿命の短い(半減期の短い)放射性元素もたくさんあったので、多くのエネルギーが放出されたはずです。
 地球内部のされぞれのエネルギーの見積もりでは、できた頃のエネルギーがいちばん大きいものだと考えられています。
 さて、つぎに、熱の伝わり方をみていきましょう。もし、マントルや地殻の岩石の熱伝導度がよければ、もうとっくに地球は冷めてしまってます。しかし、岩石が熱伝導度が悪かったため、地球の内部の熱が残っていることになります。
 しかし、どんなに熱伝導度が悪くても、多くの熱が短時間に注がれたら、あるいは熱が一部に集中すれば、岩石でも溶けてしまいます。
 地球形成の初期には、小さな天体が大量に衝突していました。そのエネルギーは、岩石が溶けてマグマの海ができるほどでした。これは、短時間に熱が供給されたためです。
 局所的に熱が集中する例としては、火山活動があります。地球内部で暖めれれたマントルの岩石が、ゆくっりと動いて地表地殻まで上昇してくると、圧力の低下によって、岩石がとけ、マグマとなります。固体から液体のマグマと姿を変えた熱は、動きやすくなり、地表に放出されます。これが火山噴火です。
 激しい活動でなくても、実は、地下の熱は地表に向かって放出されています。ただし、先ほどもいいましたが、岩石は熱伝導性が悪いため、その量は非常に小さいものです。しかし、地下から熱が流れ出していることは、実測されています。それは、地殻熱流量というものです。平均すると1平方センチメートルあたり、毎秒1.4×10^-6calという量です。非常に小さい値です。この熱流量が異常に多い地域が、火山地帯や海嶺付近です。そこでは、もちろんマグマの活動があるところです。
 さて、この小さな地殻熱流量の値は、いくつかの意味があります。まず、地球の内部の熱が少ないとはいえ、測定できるほどあるということは、宇宙空間に向かって熱が常に放出されているということです。つまり、地球はいまだに冷め続けているということです。たとえば、月や火星も同じような仕組みで冷めていったのですが、天体としてのサイズが小さかったため、今では完全に冷めてしまったのです。ですから、現在の火星や月では、火山活動は起こりません。やがては地球も冷めてしまうでしょうが、それはいつのことでしょうか。データは見当たりません。
 また、地球の熱流量が非常に小さいので、太陽からの熱の方が地表では大きなエネルギーとなっています。太陽からの地表へのエネルギーは、1平方センチメートルあたり、毎秒3.3×10^-2calという量です。地殻熱流量の1.4×10^-6calと比べると、4桁も大きいことがわかります。ですから、地表では太陽のエネルギーの方が、地下からの熱より大きくなります。しかし、地面を深く掘っていくと、太陽の熱は届かなくなり、地表の気候変動の影響がなくなり、地熱だけの熱の世界なります。それは、深くなればなるほど熱くなっていきます。それは、季節変化を受けない一定の定常的な温度となります。ですから、井戸水(地下水)は夏涼しく、冬暖かくなるのです。
 これが、地下の熱と地表の温度の関係です。」


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