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講義: 4_09 原生代2:全球凍結
掲示板: 幸運かタフか


(2004.01.29)
 前回は、原生代後期の大事件のひとつ、海水のマントルへの逆流を紹介しました。今回は、もうひとつの大事件、全球凍結について紹介しましょう。


■講義 4_09 原生代2:全球凍結

▼4 全球凍結:スノーボールアース
1 証拠
 全球凍結(ぜんきゅうとうけつ)とは、地球全体が凍(こお)りついたようになって、白くなってしまうことです。海も凍ってしまいます。どうして、そんなことが起こったとわかるのでしょうか。証拠(しょうこ)はなんでしょうか。
 いくつかの証拠が見つかっています。原生代後期にできた氷河堆積物や氷河地形などが証拠となっています。
 氷河堆積物とは、氷河によってできた堆積物ことです。このような堆積物が岩石となったものには、いくつかの種類があります。
 大きなな礫から粘土まで、さまざまなサイズの堆積物がまじりあってできている岩石としてティライト(tilite、氷礫岩(ひょうれきがん)ともよばれます)というものがあります。ティライトは、普通の海でたまった堆積物が砕石物のサイズがととのっているのに対して、サイズがばらばらです。
 きれいな年輪のような縞模様をもつヴァーブ(varve)とよばれる堆積岩があります。これは、氷河の先にできた湖では、氷河が季節変化によって溶けると堆積物がたまり、寒いとたまらないというくり返しで、堆積物に縞模様ができることがあります。氷河で運ばれた大きな石が、上のヴァーブの縞状堆積物の中に落ちこんで、はさまっているようす(ドロップストーン(dropstone)とよばれます)がみられることもあります。このような岩石は氷河地域にできます。
 氷河地形としては、新しいものでは、U字谷やカールなどがありますが、古い時代のこのような地形は、地球の表面にできるのですから、長くは残されていません。でも、地層の中であれば、地形の一部が残されることがあります。
 氷河が流れていくときに、氷河の中にとりこまれている岩石が、氷河の通り道にある岩石を傷つけていきます。この傷は一方向につけられ氷河擦痕(さっこん)とよばれます。このような氷河擦痕をもつ岩石があると、それは氷河の証拠となります。また、モレーンなどとよばれる氷河による地形なども、それが地層になると氷河があった証拠となります。
 さて、氷河堆積物や氷河地形などの証拠を、地球の陸地に残された原生代後期の地層からさがしたところ、7億5000万年前から5億8000万年前までのいくつかの時代の地層によくみつかることがわかりました。
 しかも、6億年前には、いくつかの大陸が、赤道付近にあったのですが、そんな大陸の各地から、氷河の証拠が見つかりました。現在の地球でも、赤道付近で氷河がみられます。しかし、赤道付近の氷河は標高5000m以上の高山でないとできません。5000mを越える陸地は、地球上ではそんなに広く分布することはありません。もちろん、原生代のころもです。ですから、赤道付近の各地から氷河の証拠がみつかるということは、6億年前の地球全体が、非常に冷たかったことになります。
 さらに、大陸の奥地では、乾燥した大地が広がっていました。それは、蒸発岩(じょうはつがん)とよばれる岩石が見つかることからわかります。蒸発岩とは、湖がひあがったとき、水に溶けていた成分が残って岩石になったものです。石膏(せっこう)や岩塩(がんえん)とよばれる岩石ができます。このような岩石は、大陸地域が乾燥していたことをしめしています。極地は、乾燥していることがよくあります。特に内陸では乾燥していることがあります。寒さの直接の証拠ではありませんが、否定するものでもありません。

2 全球凍結のようす
 原生代後期には、赤道付近でも氷河があったということから、当時は、地球全体が雪や氷におおわれて、まっ白になっていたと考えられます。ある見積もりによれば、平均気温は-50℃、海面は1kmの厚さの氷があったとされています。
 しかし、地球の内部からは熱が、常に放出されているので、海洋の底までは凍らなかったと考えられます。また、火山があれば、その周辺は比較的温暖な環境があったはずです。こんな氷河期のような時代が、1000万年あるいはそれ以上続いたとされています。
 このときの地球を外からながめたら、白い雪球のように見えたでしょう。ですから、英語ではこのときの地球のすがたを、スノーボールアース(Snow Ball Earth)とよんでいます。日本語では、全球凍結とよばれています。

3 全球凍結のシナリオ
 全球凍結の事件がどのようにして、つまりどんな原因で起こったのでしょうか。じつは、まだよくわかっていません。でも、とんでもない事件であったことは、予想できます。
 アメリカの地質学者のホフマン博士のシナリオをもとに、みていきましょう。
 7億7000万年前ころにあった大きなロディニアという超大陸が、分かれはじめます。6億年前には、大陸は小さく分かれ、赤道付近にできます。
 赤道付近の大陸では、雨がたくさん降り、大陸を侵食(しんしょく)していきます。はげしい雨は、大気中の二酸化炭素を溶かしこんで、大陸をつくっていたイオンと結びついて、大陸周辺の海で炭酸塩(たんさんえん)とよばれるものができ、海底にたまっていきます。
 大気中から二酸化炭素が急にへってきますので、温室効果が下がっていき、地表の温度が急激に下がります。その結果、大きな氷のかたまりが北極と南極の海にできます。広く白い氷は、太陽の光をたくさんはね返し、地球を暖めるために使われなくなるります。白っぽい地球は、寒冷化を強めていきます。このような仕組みが、悪い方に進み、全球凍結へと向かうのです。これを、暴走冷却(ぼうそうれいきゃく)とよんでいます。
 暴走冷却によって、地球はいっきに寒冷化が起こります。このとき、地球全体がこおりついたような全球凍結の時期(スノーボールアース)をむかえます。地球は、一番寒い季節をむかえ、平均気温は-50℃、海面は1kmを越える厚さの氷がはっていきます。
 氷に覆われた海洋は、今まで海洋がおこなっていた役割をはたさなくなります。それまで、海流によって、地球表層の温度を平均化する役割をはたしてきたのですが、その働きを海洋はしなくなったのです。
 海洋から、大気への水蒸気の供給はほとんどなくなるということは、雨が降らなくなるということです。大気は、乾燥していきます。氷におおわれずに残っていた陸地も、冷たく乾燥した砂漠となっていきます。大陸の乾燥化がおきます。
 やがて、全球凍結も終わりになります。それは、二酸化炭素の温室効果によるものだと考えられています。
 二酸化炭素は、火山活動によって地球内部から、つねに大気にもたらされています。大気に放出された二酸化炭素は、雨が降らないので、大気中にたまっていきます。これが、全球凍結の期間、1000万年以上も続くと、大気中の二酸化炭素の濃度は、1000倍になると考えられます。大気に二酸化炭素が増えることによって、温室効果が強く働き、地球は暖かくなっていきます。海の氷がとけてはじめ、赤道付近では海が顔を出します。
 ところが、こんどは、寒さのゆりもどしのような状態が起こると考えられます。
 急激に暖かくなることによって、海がいっきに氷から海水に変わります。その結果、海から大量の水蒸気が発生してきます。水蒸気も温室効果が生む気体です。そのために、激しい温暖化がおきます。その推定値は平均気温50℃というものです。
 全球凍結から温暖化の平均気温の差は、なんと100℃にもなります。また、海面全部に、1kmの厚さの氷がはります。信じられないような大事件です。
 ただし、これはホフマンのシナリオであって、まだ、多くの人が認めているものではありません。全球凍結については、研究ははじまったばかりです。これから、よく正確なシナリオが書かれていくはずです。

▼5 生物の進化
 生物は、原生代後期のこんな大変な事件を、乗りこえて、生きのびてきました。そんな大事件を乗りこえる前に、進化の上で大きな飛躍をなしとげていました。
 21億年前の酸素の多い大気ができるとき、真核生物があらわれました。真核生物とは、DNAを酸素から守るために、膜(まく、核膜(かくまく)とよばれます)の中に入れ、ミトコンドリアを細胞の内に持つことによって、酸素の強力な酸化作用(反応エネルギー)を有効に利用できるようになりました。このような新しい仕組みをもった生物は、大型化できるようになりました。
 そして、10億年前、2つの事件が起こる前に、生命は、多数の細胞が集まって、仕事(機能(きのう)とよびます)を分担(ぶんたん)する仕組みを手にいれました。多細胞(たさぼう)生物の出現です。
 7億5000万から5億5000万年前にかけて同じ時期におこった大事件である海水のマントルへの逆流や全球凍結を、生物はどう生きぬいたかは、よくわかっていません。それは、その事件のくわしいことがわからないせいでありますし、化石の証拠の少ないせいでもあります。
 6億年前の生物は、大部分が海洋で生活していたはずです。それも、多くの生物は、栄養豊富な海岸付近や海面付近で生活していたはずです。そのような生物が、たくさん絶滅したはず。海水のマントルへの逆流や全球凍結の大事件をくぐりぬけたものだけが、次の進化をおこなえたのです。
 5億5000万年前、大事件がおさまり、環境がおだやかになると、生命の大爆発とよばれるカンブリア紀がおとずれます。そしてかたいカラや背骨(せぼね)をもった生物が、誕生します。時代は、次の顕生代(けんせいだい)へと変わっていきます。


■掲示板: 因果関係の果てに 

・幸運かタフか・
 上で述べた全球凍結のシナリオは、ホフマンが書いたものです。このシナリオが、まだ、本当と決まったわけではありません。
 私には、このシナリオはあまりにも極端すぎるように見えます。もう少し、穏やかな事件ではなかったと思っています。私の感想には根拠はありません。ただ、もしすべての海面に、1km厚さの氷がはると、本当に生命が生きのびられるだろうかという疑問があります。光合成生物も多細胞生物の絶滅してしまうのではないかと思います。
 生命は、全体としてみると確かにタフです。しかし、そのタフさの反面、もろさも持っています。ですから、あまりに過酷な環境変化があると、生命は絶滅してしまうのではないかと思います。生命が生存可能のぎりぎりところで、環境変化が終わっているから、今の生命があるのではないかと考えています。
 このように地球の歴史を眺めていくと、生命の全滅の危機が何度も訪れていたような気がします。生命は幸運だったのでしょうか。それともタフなのでしょうか。わかりません。


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