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講義: 4_12 顕生代3:古生代から中生代へ
掲示板: 気楽に


(2004.02.19)


■講義 4_12 顕生代3:古生代から中生代へ

▼1 古生代と中生代の境界:P-T境界
 古生代の中生代の境界は、古生代のおわりのペルム紀(Permian、二畳紀ともよばれています)と中生代のはじまりの三畳紀(Traissic)の英語の最初の文字をとって、P-T境界とよばれています。境界の時代は、2億5100万年前のことです。このP-T境界では、顕生代でいちばんの大絶滅がおこっています。
 しかし、結論からいいますと、そのようすは、まだよくわかっていません。いまさかんに研究がされています。まだ研究のとちゅうですが、その研究からわかりつつあることを紹介(しょうかい)しましょう。

▼2 何があったか
 P-T境界でおこった大絶滅は、今わかっている絶滅の中では、もっとも大きなものです。この事件で絶滅したのは、海洋域の背骨のない動物(無脊椎動物(むせきついどうぶつ)といいます)のある種類わけ(属(ぞく)という分類のレベル)でみると、その比率(ひりつ)は78〜74%になるといわれています。種という種類わけでは、もっともおおきな見つもりでは、96%が絶滅したといわれています。
 この絶滅は、海の生物だけでなく陸上の生物にもおよんでいます。地球全体をおそった事件です。いったのどんな事件がおこったのでしょうか。何が原因なのでしょうか。

▼3 どこに地層があるのか
 まず、事件を調べるには、事件の現場(げんば)を調べなければなりません。その現場とは、地球の歴史、それも2億5100万年前の事件です。そんな現場を地質学者は見つけて、調べてきました。現場は、その時代に形成された地層に残されていました。
 P-T境界の大量絶滅の地層は、石灰岩からできたものでたくさんの研究がされてきました。このような地層は、当時あった大きな大陸、パンゲア超大陸の周辺(大陸棚(たいりくだな)といいます)の暖かく浅い海でたまったものでした。
 このような石灰岩の地層の研究から、三畳紀はじめのころに「リーフ・ギャップ」とよばれるものがみつかっていました。「リーフ・ギャップ」とは、ペルム紀の終わりころまで、栄えていたサンゴ礁(しょう)が、ペルム紀最後から三畳紀中期まで、まったくなくなってしまったことをいいます。
 ペルム紀の終わりころには、暖かい海だけでなくパンゲア超大陸のそれほど暖かくないと思われるような(温帯(おんたい)といます)ところにまで、サンゴ礁はできていました。いたるところにサンゴ礁があったのですが、サンゴという生物が、P-T境界で絶滅したのです。
 「リーフ・ギャップ」の期間は、約1000万年におよびます。1000万年間、サンゴ礁がない時期があったのです。
 しかし、このような地層の研究では、2億5100万年前に広がっていた海の環境の変化を知ることができません。当時の大陸はパンゲア超大陸があり、超大陸の東側には内湾(ないわん)がありました。そのほかには、広いひとつの海がありました。この海をパンサラッサ海とよんでいます。
 海でも絶滅がおこっていますので、海の情報も必要です。あるいは、絶滅の事件の原因は、海にあったかもしれません。そのために、海のまんなか(遠洋(えんよう)といいます)でできた地層の研究が、大切になります。
 最近まで、遠洋性の地層で、P-T境界をまたぐ連続した地層がでているところ(露頭(ろとう)といいます)は、あまり知られていませんでした。しかし、磯崎さんたちが、精力的に調べ、日本のいろいろなところで、連続した地層を発見しました。現在も磯崎さたちは、日本列島の周辺で、P-T境界の絶滅について調べられているます。

 現在、P-T境界の連続露頭が知られているのは、以下の4つの地域です。
岐阜県各務原市〜愛知県犬山市
岐阜県大垣市赤坂
愛媛県東宇和郡城川町
宮崎県西臼杵郡高千穂町上村
それぞれの場所の地層の性質をまとめてきましょう。

表 P-T境界の地層(その1)
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地域     境界の岩石   境界のようす
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岐阜県犬山  黒色チャート  黒色有機質泥岩
岐阜県赤坂  石灰岩     5mm酸性凝灰岩
愛媛県城川  ドロマイト   不明
宮崎県上村  ドロマイト   1〜3mm淡緑色粘土層
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 表のドロマイト(苦灰岩(くかいがん)ともよばれます)という岩石は、石灰岩とは違いますが、石灰岩からできたものです。ドロマイトは、直接作られることはなく、石灰岩が原因はまだよくわかっていませんが、元素を交換して(カルシウムがマグネシウムに変わる)できるものです。ですから、もともとは石灰岩です。
 また、愛媛県城川町のドロマイトは、地層がでているわけではなく、砕石所でおこなったボーリングの調べた論文から加えられたものです。
 上の表から、火山灰の層が、どこにでも見られます。火山灰は風によって運ばれます。北半球の日本のようなところでは、西から東に向かって風が吹きます。火山灰がどこから来たかを調べるために、磯崎さんたちは、中華人民共和国四川省朝天(Chaotian)を調べにいかれまし。ここにでている地層は、大陸棚の石灰岩でです。しかし、中国でも火山灰が見つかりました。

表 P-T境界の地層(その2)
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地域     境界の岩石   境界のようす
中国朝天   石灰岩と泥岩  多数の白色酸性凝灰岩、数cm〜3m
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 なんと、3mにもなる火山灰の地層がありました。もしかすると、巨大火山がP-T境界の大絶滅の原因かもしれません。そして、その火山灰を出した火山は、どこにも見つかってないのです。謎がますます深まります。

▼4 どんな地層か
1 チャート
 磯崎さんが調べられた地層のうち、岐阜県各務原市から愛知県犬山市ではチャートとよばれる岩石からできていました。このチャートが大切な海の証拠となります。
 チャートは、遠洋性のプランクトンが深海底にしずみ、たまってできた岩石です。ですから、チャートは陸や大気の影響をほとんど受けない環境でできた地層といえます。
 犬山のチャートをくわしく調べてみると、つぎのようなことがわかってきました。
・境界前後1000万年間放散虫(ほうさんちゅう)化石がない
・境界前後1500万年間チャートの堆積停止
・境界前後2000万年間還元的(かんげんてき)堆積物の堆積
・境界は対称的(たいしょうてき)な岩相変化
という証拠が見つかってきました。
 放散虫とは、遠洋性のプランクトンで、チャートをつくった生物です。還元的堆積物とは、酸素がない状態でたまったものであることを意味しています。
 このような証拠から、いくつ重要な予想がでてきます。
 「境界前後1000万年間放散虫化石がない」ということは、遠洋性の表層に住んでいるプランクトンにまで絶滅がおよんでいるということです。「境界前後1500万年間チャートの堆積停止」は、放散虫のようなプランクトンがチャートをつくれるまでに回復(かいふく)するのにかかった時間が、絶滅後500万年であるということです。
 また、「境界前後2000万年間還元的堆積物の堆積」とは、海水が地球全体をめぐること(循環(じゅんかん)といます)に関係があります。深海に酸素がもたらされるのは、大気や海面付近の酸素の多い海水が循環しなければなりません。ところが、深海には酸素のない状態がおこっています。これは、海水の循環が悪くなったり、海の海面付近での酸素がつくられてなかったことが考えられます。
 このように海で酸素のない(欠乏(けつぼう)といいます)事件を、「超酸素欠乏事件(Superanoxia)」とよんでいます。酸素がなくなる事件は、時々おこっています。
 小さな海洋の酸素欠乏事件では、その期間は1万から10万年ほど続きます。このような事件が、K-T境界ではおこっています。通常の酸素欠乏事件では、10万から100万年ほど続きます。そのような規模ものは、ジュラ紀と白亜紀の境界におこっています。そして、超酸素欠乏事件は1000万年も続きます。これは、地球の歴史の中でP-T境界だけにみられる大事件です。
 「境界は対称的な岩相変化」というのは、じつは重要です。地層が古いほうと新しいほうに、同じように石のようすが変化しているということです。隕石の衝突(しょうとつ)のような突然の事件では、対称な変化にはなりません。どうも、隕石の衝突の影響ではなさそうです。

2 石灰岩
 石灰岩には、大陸の周辺での礁(しょう)としてたまるものと、海洋島や海山の上の礁としてたまるものがあります。礁とは、サンゴのような外に石灰質の骨をもつような動物がたくさん集まってできるものです。造礁性生物(ぞうしょうせいせいぶつ)とよばれています。
 磯崎さんたちが見つけた石灰岩は、海洋島や海山の上にできた礁をつくっていたものです。そのような環境は、陸の影響を受けないで、大気や海洋などの変化を受けやすい場所です。
 海のまんなかの島にできた石灰岩は、プレートの移動によって、しずみこみ帯にまで、運ばれてきます。そして、石灰岩は軽く、でっぱっているために、海溝のおくにはもぐりこめずに、大陸側にはぎとられて、地層の中にとりこまれていきます。これが付加体(ふかたい)とよばれるものです。

 磯崎さんたちは、付加体の中に、P-T境界の石灰岩があることを発見されたのです。
 もちろんそこにも、事件は記録されていました。

▼5 なにが、原因か
 P-T境界の絶滅は、地球の生命の歴史の中で、もっとも大きな絶滅でした。ですから、研究者は、いままで、いくつもの原因が考えられてきました。まささに、ありとあらゆるといっていいほど、いろいろな原因を考えてきました。しかし、まだ、みんながこれだと思えるようなものは見つかっていません。

 まず、地球外の原因(隕石衝突、宇宙放射能)は、証拠がみつからなかったので、否定されました。ただし、隕石の証拠が見つかったという論文が、時々報告されます。しかし、まだまだ証拠が不十分なようです。
 P-T境界で起こった事件は、上でいったような、
・海洋の超酸欠事件
・大きな火山活動
事件がおこっています。それ以外にも、
・大規模な海退
などの事件もおこっています。これらの原因と結果の関係(因果(いんが)関係といいます)はよくわかっていません。
 いずれも、P-T境界の前のできごととして重要なものは、パンゲア超大陸の誕生で、P-T境界のあとのできごととしては、パンゲア超大陸の分裂(ぶんれつ)があります。
 P-T境界の事件とパンゲア超大陸の分裂とは、なんらかの関係があるのではないかと、多くの研究者が考えています。

http://www.scotese.com/newpage5.htm
 超大陸の分裂は、大きな暖かいマントルが上がって(スーパープルームという)くることによって、はげしい火山活動がおこります。それが、地球規模の環境変化を起こしたのではないかと考え「プルームの冬」となづけられて、研究されています。
 P-T境界にみられる火山灰を供給した火山が、もしかすると「プルームの冬」の原因かもしれません。この火山灰は、酸性マグマからできている火山で、噴出時期は2億5900万年前〜2億5100万年前です。しかし、それにあたる火山はみつかっていません。
 まだ、P-T境界の事件の原因はわかっていません。いま、事件のあらたな証拠が、いろいろなところから集まってきたのです。証拠は、まだ、ばらばらになったジグソーパズルのように全体がわからないままなのです。


■掲示板: 気楽に 

・気楽に・
 以前Nanさんから、

「学生ではないので試験のために復習することも覚えることもありませんし、なかなか強制力が働かないので仕方ありませんが、このあたり先生はどうお考えでしょうか。」

という質問を受けました。それに対して、私は、次のような返事を書きました。

「私も、学ぶ側として、この悩みをもっています。新しいことを学ぼうとすると、読んでいてもすぐ忘れてしまいます。座学的な知識は、なかなか身に付かないものです。とくに単発的で脈絡のないものは、身に付きません。ですからメールマガジンもできるだけストーリー性や関連性を持たせるように努力はしています。また、講義ではできるだけ以前つかった知識を前提とすることなく、勧めてたいと考えています。ただし、ついつい前にやったこととして、語ることをしてしまいますが。
 でも、忘れることを恐れていては、何も学問ができなくなってしまいます。私は忘れてもいいと思って学んでいます。忘れても、ゼロではないはずです。なんらかのキーワード、何が書かれていたかくらいは覚えているはずです。それでいいと思います。
 本当に身につけなければならないとなれば、そんなささやか記憶が手がかりとして、重要な支えとなるかもしれません。新しいことを取り組むしても、ゼロよりはキーワードを知っていれば、気持ちの上でも違ったものになるはずです。
 それよりも、学んでいるとき、面白いと思えるかどうかの方が重要ではないでしょうか。嫌々であったら、ささやかな記憶にさえ残りにくいはずです。面白くなくても、悩んだり、考えたりした方が記憶に残ります。ですから、私は楽しく読んでいただければいいと思っています。必要となれば、ささやかな記憶を支えとして、まとまった教科書を読めばいいのです。このメールマガジンがその導入となればいいと思います。気楽にいきませんか。」

というものです。この講義もあと少しです。皆さんも、気楽にいきましょう。

 


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